研究記事 41

5番の歌 キリスト ― わたしたちの手本

イエスが天に戻るまでの最後の40日間

イエスが天に戻るまでの最後の40日間

「イエスは……40日にわたって現れ,神の王について話しました」。使徒 1:3

ポイント

イエスが天に戻るまでの最後の40日間に行ったことから何を学べるかを考えます。

1-2. イエスの2人の弟子がエマオに向かって歩いている時,どんなことがありましたか。

 西暦33年のニサン16日のことです。イエスの弟子たちは悲しみと不安な気持ちでぼうぜんとしていました。そのうちの2人がエルサレムから11㌔ほど離れたエマオという村に向かいます。2人はとても落ち込んでいました。これまで従ってきたイエスが死んでしまったからです。メシアに大きな期待を寄せていたのに,それはかなわなくなってしまったように思えました。でも,驚くようなことが起きます。

2 ある人が2人に近づいてきて,一緒に歩き始めます。弟子たちはイエスが亡くなってがっかりしていることを話します。それに対してその人が話した内容は,2人にとって決して忘れられないものになりました。「モーセと全ての預言者の書から始めて」,メシアがどうして苦しんで死ぬ必要があったのかを説明してくれたのです。エマオに到着した後,その人が復活したイエスであることが分かります。弟子たちはメシアが生きていることを知って,どれほどうれしかったことでしょう。(ルカ 24:13-35

3-4. イエスの弟子たちはどんなことを経験しましたか。この記事ではどんなことを学びますか。(使徒 1:3

3 イエスは天に戻るまでの40日間に,弟子たちの前に何度も現れました。使 1:3を読む。)そして,悲しみや不安でいっぱいだった弟子たちを元気づけます。おかげで弟子たちは喜びを取り戻し,勇気と確信を持って王国の良い知らせを伝え,人々を教えることができるようになりました。 a

4 イエスがこの特別な40日間に行ったことから,いろいろなことが学べます。イエスがこの期間中に,(1)弟子たちを力づけるため,(2)聖書の理解を深めるよう助けるため,(3)大きな責任を担えるようトレーニングするために,どんなことをしたかを考えましょう。また,私たちがイエスの手本にどのように倣えるかについても考えます。

他の人を力づける

5. イエスの弟子たちに励ましが必要だったのはどうしてですか。

5 イエスの弟子たちに励ましが必要だったのはどうしてでしょうか。弟子たちの中には,イエスに従うために家族に別れを告げ,家や仕事を手放した人たちがいました。(マタ 19:27)また,イエスの弟子になったために,みんなからのけ者にされた人もいました。(ヨハ 9:22)弟子たちがそうした犠牲を払ったのは,イエスを約束されたメシアだと信じていたからでした。(マタ 16:16)でもイエスが殺された時,希望が打ち砕かれたように感じてがっかりしてしまいました。

6. イエスは復活した後,何をしましたか。

6 イエスは弟子たちが気落ちしている様子を見ても,信仰が弱くなったとは考えなかったことでしょう。それが大変な経験をした時の自然な反応であることを理解していたからです。それで,イエスは復活したその日から友である弟子たちを力づけるために行動しました。例えば,墓で泣いていたマリア・マグダレネの前に現れました。(ヨハ 20:11,16)また,この記事の初めで考えたように,2人の弟子たちの前にも現れました。ペテロにも会いに行きました。(ルカ 24:34)イエスの手本からどんなことが学べるでしょうか。マリア・マグダレネの前に現れた時のことを考えてみましょう。

7. イエスはニサン16日の早朝にマリアがどうしているのを見ましたか。何をしてあげたいと思いましたか。(ヨハネ 20:11-16)(挿絵も参照。)

7 ヨハネ 20:11-16を読む。ニサン16日の早朝,何人かの女性がイエスの墓に行きました。(ルカ 24:1,10)その中にマリア・マグダレネがいました。マリアが墓に来ると,そこにイエスの体はありませんでした。マリアはペテロとヨハネの所に走っていってそのことを伝え,2人の後を追ってまた墓に戻りました。空になった墓を見て,2人は家に戻りました。でもマリアはそこに残って泣いていました。マリアは全く気付いていませんでしたが,イエスはその涙を見ていて,慰めてあげたいと思いました。それでマリアの前に姿を現し,話し掛けます。イエスは,自分が復活したことを兄弟たちに伝えるという大切な役割を任せました。短いやりとりでしたが,それはマリアにとって大きな力になりました。(ヨハ 20:17,18

イエスに倣い,周りの人の様子に気を配り,落ち込んでいる人の気持ちを思いやるようにする。(7節を参照。)


8. イエスにどのように倣えますか。

8 イエスにどのように倣えるか。私たちもエホバに仕え続けられるように仲間を力づけることができます。イエスのように周りの人の様子によく気を配り,誰かが気落ちしていることに気付いたなら,相手の気持ちを思いやりながら話し掛けましょう。妹を事故で亡くすというつらい経験をしたジャスラン姉妹はこう言っています。「何カ月もの間,悲しみのどん底にいました」。そんな時,ある夫婦が家に呼んで親身になって話を聞いてくれました。そして,姉妹がエホバにとって本当に大切な存在であることを思い出せるように助けてくれました。姉妹はこう言います。「まるでエホバが兄弟姉妹を使って,荒れ狂う海の中から私を救命ボートに引き上げてくれたように感じました。兄弟姉妹のおかげで,エホバに仕え続けたいという気持ちを取り戻すことができました」。私たちも,相手が自分の気持ちを話してくれる時は注意深く聞き,相手を思いやりながら話すようにしましょう。そうするなら,エホバに仕え続けられるよう仲間を力づけることができます。(ロマ 12:15

聖書を正しく理解できるよう助ける

9. イエスの弟子たちはどんなことを難しく感じていましたか。イエスはどのように助けましたか。

9 イエスの弟子たちは神の言葉を受け入れ,それを自分の生活で実践するよう努力していました。(ヨハ 17:6)でも,イエスがなぜ犯罪者として苦しみの杭に掛けられて亡くなったかを理解できていませんでした。イエスは弟子たちがエホバを愛して信仰を抱いていることを知っていましたが,聖句をより正確に理解する必要があることに気付きました。(ルカ 9:44,45。ヨハ 20:9)それで,聖句に基づいて考えるように弟子たちを助けました。エマオへの道で2人の弟子の前に現れた時にイエスがどのように教えたか,考えてみましょう。

10. イエスは自分が本当のメシアであることを弟子たちが理解できるよう,どのように助けましたか。(ルカ 24:18-27

10 ルカ 24:18-27を読む。イエスは自分が誰であるかをすぐには言いませんでした。その代わりに質問をしました。どうしてでしょうか。弟子たちがどんな気持ちでいて,どんなことを考えているかを話してもらいたいと思ったからでしょう。実際2人は,イエスがローマの圧制からイスラエルを救出してくれることを期待していた,と話しました。イエスは2人が不安な気持ちを打ち明けるのをよく聞いてから,それまで起きたことについて正しく理解できるよう聖書を使って助けました。 b イエスはその晩,ほかの弟子たちにもそのことを説明しました。(ルカ 24:33-48)こうした出来事から何を学べるでしょうか。

11-12. (ア)イエスが聖書の真理を教えた方法から,どんなことが学べますか。(写真も参照。)(イ)聖書を教えていた兄弟は,ノーテイ兄弟をどのように助けましたか。

11 イエスにどのように倣えるか。聖書レッスンをするときには上手に質問をして,学んでいる人の考えや気持ちを引き出すようにしましょう。(格 20:5)相手の気持ちが分かったなら,その人の状況にぴったり合う聖句をどうすれば見つけられるかを教えてあげてください。どうすべきかをすぐに言いたくなる気持ちを抑えましょう。聖句に基づいて考え,それを生活の中で実践するにはどうすればよいかを理解できるように助けましょう。そのことの大切さが分かるガーナのノーテイ兄弟の例を考えます。

12 ノーテイ兄弟は16歳の時に聖書を学び始めました。でも,すぐに家族からの反対が始まりました。聖書を学び続けるのに,どんなことが助けになったでしょうか。ノーテイ兄弟と聖書レッスンをしていた兄弟は,本物のクリスチャンは迫害されるということをマタイ 10章から前もって教えていました。ノーテイ兄弟はこう言っています。「それで,反対が始まった時,やっぱりこれが真理なんだと確信しました」。また,聖書を教えていた兄弟はマタイ 10章16節から,自分が信じていることを家族に説明するときには注意深く敬意を込めて話すことが大切だ,と教えました。バプテスマを受けた後,ノーテイ兄弟は開拓者になりたいと思っていましたが,父親は大学に行くことを願っていました。聖書を教えていた兄弟は,何をすべきかを言う代わりに,質問をして,聖書の教えに基づいて考えるよう助けました。どうなったでしょうか。ノーテイ兄弟は開拓奉仕を始めることにしました。その結果,父親から家を出るように言われました。兄弟はこの出来事を振り返って,どう感じているでしょうか。「正しい決定ができたと思うので,後悔は全くありません」と言っています。私たちも聖書に基づいて考えるよう他の人を教えるなら,クリスチャンとしてぶれない人になるよう助けることができます。(エフェ 3:16-19

イエスに倣い,学んでいる人が聖句に基づいて考えるよう助ける。(11節を参照。) e


「人々という贈り物」になれるよう兄弟たちを訓練する

13. イエスはエホバから委ねられた仕事が引き続ききちんと行われるよう,どんなことをしましたか。(エフェソス 4:8

13 イエスは地球にいた時,天のお父さんから委ねられた仕事を完璧に行いました。(ヨハ 17:4)でもイエスは,自分でないとこの仕事はできないとは考えませんでした。その仕事を行えるよう,3年半の宣教期間中にほかの人たちを訓練しました。イエスは天に戻る前,エホバの大切な羊を世話し,伝道して教える活動で率先するという責任を弟子たちに委ねました。その中には20代の人もいたかもしれません。エフェソス 4:8を読む。)弟子たちはそれまでもイエスと一緒に忠実に一生懸命働いてきましたが,イエスは天に戻るまでの最後の40日間を活用し,「人々という贈り物」になることができるようさらに訓練しました。どんなことをしたのでしょうか。

14. イエスは天に戻るまでの40日の間に,どんなことを弟子たちに教えましたか。(挿絵も参照。)

14 イエスは率直でありながらも愛のこもった仕方でアドバイスしました。例えば,ある弟子たちに疑う傾向があることに気付いた時,助言を与えて助けました。(ルカ 24:25-27。ヨハ 20:27)また,生計を立てるための仕事に気を取られるのではなく,エホバの羊を世話することに集中する大切さについても教えました。(ヨハ 21:15)ほかの人がどんな奉仕の機会を与えられているかを気にして比べることがないようにとも教えました。(ヨハ 21:20-22)また,王国について間違った期待を持っていた弟子たちを正し,良い知らせを伝えることに打ち込むよう助けました。(使徒 1:6-8)では,長老たちはイエスからどんなことを学べますか。

イエスに倣い,兄弟たちがより多くの責任を担えるよう助ける。(14節を参照。)


15-16. (ア)長老たちはどのようにイエスに倣うことができますか。(イ)パトリック兄弟にとって,長老からのアドバイスはどのように役立ちましたか。

15 たちはイエスにどのように倣えるか。長老たちは,比較的若い人たちを含め兄弟たちがさらに大きな責任を担えるよう訓練し,サポートする必要があります。 c 訓練を受ける人たちに完璧であることを求めたりはしません。長老たちは若い兄弟たちに愛情深いアドバイスを与えることによって,進んで仕え,謙遜で信頼できる人になることの大切さに気付けるよう助けます。(テモ一 3:1。テモ二 2:2。ペテ一 5:5

16 パトリック兄弟の例を考えてみましょう。兄弟はとても役立つアドバイスをもらいました。兄弟は若い時,きついことを言ったり親切でないことをしたりしてしまうことがよくありました。姉妹たちに対してもです。経験豊かな長老が兄弟の弱点に気付いて,親切な仕方で,率直にアドバイスしました。兄弟はこう言っています。「とてもありがたかったです。以前は,自分が願っている奉仕の機会がほかの兄弟たちに与えられるのを見ると落ち込んでいました。でも,その長老のアドバイスのおかげで,会衆での奉仕の立場や機会よりも,仲間に謙遜に仕えることに注意を向ける大切さに気付くことができました」。その後,パトリック兄弟は20代前半の時に長老として奉仕するよう任命されました。(格 27:9

17. イエスは弟子たちを信頼していることをどのように表しましたか。

17 イエスは弟子たちに,良い知らせを伝えるだけでなく,教える責任も委ねました。(マタイ 28:20の注釈「教えなさい」の項目を参照。)弟子たちは,自分にはそんな仕事を果たす資格はないと感じたかもしれません。でもイエスは,弟子たちならできると信じていました。それで,「天の父が私を遣わしたように,私もあなたたちを遣わします」と言って,弟子たちを全面的に信頼していることを伝えました。(ヨハ 20:21

18. 長老たちはイエスにどのように倣えますか。

18 たちはイエスにどのように倣えるか。経験豊かな長老たちは,ほかの兄弟たちに責任を委ねます。(フィリ 2:19-22)例えば,若い人たちに王国会館の清掃やメンテナンスに加わってもらうことができます。仕事を割り当てたなら,それを果たせるよう訓練し,やり遂げられると信頼していることを伝えましょう。最近長老になったマシュー兄弟は,割り当てを果たせるよう経験豊かな長老たちがいろいろな面で訓練してくれたことや,自分を信頼して仕事を任せてくれたことをとても感謝しています。こう言っています。「失敗しても,それを成長の過程の一部と見て改善できるよう助けてくれたことに,本当に感謝しています」。 d

19. どんな点でイエスに倣いたいと思いますか。

19 イエスは天に戻る前の40日間を,弟子たちを力づけ,教え,訓練するために使いました。私たちもぜひその手本に倣いましょう。(ペテ一 2:21)イエスはそうできるよう助けてくれます。こう約束しているからです。「私は体制の終結までいつの日もあなたたちと共にいるのです」。(マタ 28:20

109番の歌 エホバの初子を歓呼して迎えなさい!

a 福音書や聖書の他の箇所には,復活したイエスがいろいろな人に会った記録があります。例えば,マリア・マグダレネ(ヨハ 20:11-18),ほかの女性たち(マタ 28:8-10。ルカ 24:8-11),2人の弟子(ルカ 24:13-15),ペテロ(ルカ 24:34),トマス以外の使徒たち(ヨハ 20:19-24),トマスを含む使徒たち(ヨハ 20:26),7人の弟子たち(ヨハ 21:1,2),500人以上の弟子たち(マタ 28:16。コリ一 15:6),弟のヤコブ(コリ一 15:7),使徒たち全員(使徒 1:4),ベタニヤの近くにいた使徒たち(ルカ 24:50-52)と会った記録が残されています。聖書に記録されていないほかの例もあるかもしれません。(ヨハ 21:25

b jw.orgの「メシアについての預言はイエスに当てはまりますか」という記事には,メシアについての預言のリストが載せられています。

c 資格を満たした兄弟が,20代半ばから後半で巡回監督に任命される場合もあります。とはいえ,そうした兄弟たちはまず長老として経験を積む必要があります。

d 「ものみの塔」2018年8月号11-12ページ15-17節2015年4月15日号3-13ページにも,責任を担えるよう若い兄弟たちを助けるのに役立つ提案があります。

e や挿: 聖書を学んでいる人が,聖句に基づいて考えるよう助けてもらっている。その後,クリスマスの飾り付けを捨てている。