研究記事 40
91番の歌 わたしの父,わたしの神,わたしの友
エホバは「心が傷ついた人を癒やす」
「[エホバは]心が傷ついた人を癒やす。傷を包んでくださる」。詩編 147:3
ポイント
エホバは心が傷ついた人のことをとても気に掛けています。この記事では,エホバが私たちのつらい気持ちをどのように和らげてくださるか,また他の人を慰めることができるようにどのように助けてくださるかを学びます。
1. エホバはご自分に仕える人たちのことをどう感じていますか。
エホバはご自分に仕える人たちがどんなことを経験しているかを全て知っています。(詩 37:18)楽しいことも悲しいことも知ってくれています。つらく感じることがあっても一生懸命仕えている私たちのことを,エホバは誇りに感じているに違いありません。それだけでなく,私たちを支え,慰めたいと思っています。
2. エホバは心が傷ついた人のためにどんなことをしてくださいますか。エホバに助けてもらうために,私たちはどんなことをする必要がありますか。
2 詩編 147編3節には,エホバは心の「傷を包んでくださる」と書かれています。この言葉から,心が傷ついた人をエホバが優しく世話してくださることが分かります。でもエホバに助けてもらうためには,私たちにもしなければいけないことがあります。例えで考えてみましょう。腕の良い医師は,けがをした人が回復するのを助けることができます。でもけがをした本人も,医師の指示にきちんと従う必要があります。この記事では,心の傷ついた人のためにエホバが聖書に記録させた言葉を考え,そのアドバイスをどのように実践できるかを学びます。
エホバは私たちを大切に思っている
3. どんなことが理由で自分には価値がないと感じることがありますか。
3 今は愛の欠けた冷たい世の中なので,自分には価値がないと感じている人は少なくありません。ヘレン姉妹はこう言っています。 a 「家族から愛情を受けずに育ちました。父からは暴力を振るわれ,ひどいことを毎日のように言われ,自分には何の価値もないんだと思うようになりました」。もしかするとあなたもヘレン姉妹のように,虐待されたり,ひどい言葉を浴びせられたり,愛情を受けてこなかったりしたかもしれません。そういうことがあると,自分を本当に気に掛けてくれる人なんて誰もいないと思うかもしれません。
4. 詩編 34編18節によると,エホバはどんなことを約束していますか。
4 ほかの人からひどいことを言われたりされたりしたとしても,エホバから愛され,大切にされていることを忘れないでください。「エホバは心が傷ついた人のそばにい」ます。(詩編 34:18を読む。)「打ちのめされた」ように感じるときは,エホバが心の中の良いものを見てあなたを引き寄せてくださったということを思い出してください。(ヨハ 6:44)あなたはエホバにとって大切な存在なので,エホバはいつでも助けたいと思っています。
5. ほかの人たちから見下されていた人たちへのイエスの接し方からどんなことを学べますか。
5 イエスの人への接し方からも,エホバの気持ちについて知ることができます。イエスは伝道していた時,ほかの人から見下されている人たちに目を留め,思いやり深く接しました。(マタ 9:9-12)ある女性が,重い病気を癒やしてもらいたいと思ってイエスの外衣に触れたことがありました。その時,イエスは優しい言葉を掛け,その女性の信仰を褒めました。(マル 5:25-34)イエスの性格はお父さんエホバとそっくりです。(ヨハ 14:9)それで,エホバも私たちのことを大切に思い,信仰や愛といった良い点に注目してくれていることが分かります。
6. 自分には価値がないという気持ちに負けないためにどんなことができますか。
6 自分には価値がないという気持ちがなかなか消えない場合はどうしたらいいでしょうか。エホバが大切に思ってくださっていることが分かる聖句を読んで,じっくり考えましょう。 b (詩 94:19)目標を達成できなかったり,ほかの人ほどできていないことにがっかりしたりすることがあっても,自分に厳しくなり過ぎないようにしましょう。エホバは私たちができないことまで期待するような方ではありません。(詩 103:13,14)もし過去に虐待を受けたことがあるとしても,自分を責めたりしないでください。あなたは何も悪くありません。エホバは,被害を受けた人ではなく,悪いことをした人に責任を問います。(ペテ一 3:12)子供の頃に虐待を受けていたサンドラ姉妹はこう言っています。「自分に対してエホバと同じバランスの取れた見方ができるように助けてください,といつも祈っています」。
7. これまで経験してきたことがエホバへの奉仕にどのように役立つかもしれませんか。
7 自分は誰かの役に立つことなんてできない,とは考えないでください。エホバは私たちに宣教という仕事を与えてくれています。エホバと共に働く素晴らしい機会です。(コリ一 3:9)もしかすると,これまで経験してきたことが,人の気持ちを感じ取ったり思いやったりする上で役立つかもしれません。人を助けるためにあなたにできることはたくさんあります。先ほどのヘレン姉妹はいろいろな助けを受けて,今ではもっとほかの人を助けられるようになりました。こう言っています。「自分には価値がないと思っていましたが,エホバのおかげで,自分は愛されていて人の役に立てるんだ,と思えるようになりました」。姉妹は今,正規開拓者として楽しく奉仕しています。
エホバは私たちが許されていることを信じてほしいと思っている
8. イザヤ 1章18節からどんなことが分かりますか。
8 バプテスマを受ける前や受けた後にしてしまった良くないことを思い出して,自分を責めてしまうということがあるかもしれません。そういうときは,エホバが私たちを深く愛して贖いという贈り物を与えてくださったことを思い出しましょう。エホバはその贈り物を拒まずに受け取ってほしいと思っています。私たちがエホバとの間で「物事を正」したなら,エホバは私たちの罪を完全に許してくださいます。 c (イザヤ 1:18を読む。)後からそれを持ち出したりはしません。一方で,私たちがした良いことはずっと覚えていてくれます。そのことに本当に感謝できます。(詩 103:9,12。ヘブ 6:10)
9. 過去にではなく今と将来に目を向けるよう努力すべきなのはどうしてですか。
9 以前にしてしまったことのために心が痛んでいるなら,過去にではなく今と将来に目を向けるように努力しましょう。パウロの例を思い出してください。パウロはクリスチャンたちをひどく迫害したことを後悔していました。でも,エホバが許してくださっていることを知っていました。(テモ一 1:12-15)パウロは自分が犯してしまった罪について,いつまでもくよくよ考えたでしょうか。そうはしなかったでしょう。ユダヤ教の支持者としての過去の功績についても考え続けたりすることはなかったからです。(フィリ 3:4-8,13-15)パウロは伝道に打ち込み,将来に目を向けました。私たちも過去を変えることはできませんが,今置かれている状況の中でエホバを賛美し,エホバが約束してくださっている素晴らしい将来に目を向けることができます。
10. 以前に誰かを傷つけてしまった場合,どんなことができますか。
10 以前に誰かを傷つけてしまったことで,心が痛む場合はどうしたらいいでしょうか。相手のためにできる限りのことを行い,誠実に謝りましょう。(コリ二 7:11)傷つけてしまった人のことを助けてくれるよう,エホバに祈ってください。エホバは,あなたと相手が穏やかな気持ちを取り戻し,これからも頑張っていけるよう助けてくださいます。
11. ヨナの例からどんなことを学べますか。(挿絵を参照。)
11 間違いから学び,エホバがあなたにしてほしいと思っていることを進んで行いましょう。ヨナの例を考えてみてください。ヨナは神からニネベに行くよう言われたのに,反対方向に逃げてしまいました。でも,エホバからの矯正を受け,自分の間違いから学びました。(ヨナ 1:1-4,15-17; 2:7-10)エホバはヨナを見限ったりしませんでした。再びニネベに行くよう指示されると,ヨナはすぐに従いました。以前にしてしまったことでがっかりするあまり,エホバから与えられた仕事を断ってしまうことはありませんでした。(ヨナ 3:1-3)
エホバは聖なる力によって慰めてくださる
12. トラウマになるようなつらい経験をする時,エホバはどのように心を落ち着かせてくださいますか。(フィリピ 4:6,7)
12 トラウマになるようなつらい経験をする時,エホバは聖なる力によって私たちを慰めてくださいます。ロン兄弟とキャロル姉妹の例を考えましょう。2人は,息子が自分で命を絶つというとてもつらい出来事を経験しました。こう言っています。「それまでも大変なことはいろいろありましたが,その中でも一番つらい出来事でした。眠れない日が続きました。でもエホバに祈ると,フィリピ 4章6,7節の言葉の通り,本当に心が落ち着きました」。(読む。)心が張り裂けるようなつらい経験をする時,祈って自分の気持ちを全部エホバに伝えましょう。何度でも何時間でも祈ることができます。(詩 86:3; 88:1)聖なる力を与えてください,とエホバに繰り返しお願いしましょう。エホバはいつでも助けてくださいます。(ルカ 11:9-13)
13. 聖なる力は,エホバに仕え続ける上でどのように助けになりますか。(エフェソス 3:16)
13 難しい試練を経験して,疲れ切ってしまったと感じることがありますか。そのようなときも,聖なる力はエホバに仕え続ける助けになります。(エフェソス 3:16を読む。)フローラ姉妹の例を考えてみましょう。姉妹は夫と2人で宣教者として奉仕していました。でも夫は姉妹を裏切り,2人は離婚しました。姉妹はこう言っています。「夫に裏切られて,苦しくて何も考えられませんでした。このつらい状況を耐えられるように聖なる力を与えてください,とエホバに祈りました。エホバは私の祈りに答えて心の傷を癒やしてくださいました。初めは乗り越えられないと思っていましたが,頑張り続けるための力を与えてくれました」。フローラ姉妹は,エホバをもっと信頼し,どんな時も支えてもらえると確信できるように,エホバが助けてくださっていると感じています。姉妹はさらにこう言っています。「詩編 119編32節の通りだと思いました。『私は何があってもあなたのおきてに従う。あなたがそのために私の心を広げてくださるから』」。
14. どうすれば聖なる力を受けることができますか。
14 聖なる力を与えてくださいと祈った後は,どんなことができるでしょうか。聖なる力を受けることができるよう自分でも努力しましょう。集会に出席したり,伝道に参加したりすることは欠かせません。毎日聖書を読んでエホバの考えを知るようにしましょう。(フィリ 4:8,9)試練を経験した人たちに注目し,その人たちが忍耐できるようエホバがどのように支えたか,じっくり考えてください。いろいろ大変なことを経験した先ほどのサンドラ姉妹は,こう言っています。「ヨセフの話が特に力になっています。ヨセフは試練や不公正を経験しても,エホバとの絆が決して弱まってしまうことがないようにしました」。(創 39:21-23)
エホバは仲間の兄弟姉妹によって慰めてくださる
15. つらい時,誰が慰めてくれることがありますか。どのように助けてくれますか。(写真も参照。)
15 つらい経験をする時,仲間の兄弟姉妹が「とても慰めて」くれることがあります。(コロ 4:11)私たちはそうした兄弟姉妹を通してエホバの愛を感じることができます。例えば,親身になって話を聞いてくれたり,そばにいてくれたりするだけでもほっとします。力になる聖句を教えてくれたり,祈ってくれたりすることもあるでしょう。 d (ロマ 15:4)エホバの考え方を思い起こしてバランスの取れた見方ができるように助けてくれることもあるかもしれません。ほかにも,食事を作ってくれたりして,力が出ない時にサポートしてくれることもあります。
16. 仲間に支えてもらうためにはどうする必要があるかもしれませんか。
16 仲間に支えてもらうためには,自分の方から助けを求める必要があるかもしれません。兄弟姉妹は私たちを愛していて,助けたいと思っています。(格 17:17)でも,私たちがどんな気持ちでいるか,どんな助けを必要としているかを知らないかもしれません。(格 14:10)つらく感じる時は,信頼できる友達に気持ちを話してください。どんなサポートを必要としているかを伝えましょう。自分にとって話しやすい1人か2人の長老に話すこともできます。姉妹たちの中には,クリスチャンとして安定した別の姉妹に話すと安心する人もいるかもしれません。
17. どんなことが原因で,仲間からの助けを受けにくくなってしまうことがありますか。
17 人と関わりたくないという気持ちに負けないようにしましょう。つらい気持ちの時には人と話す気になれないと感じることがあるものです。兄弟姉妹から誤解されたり,何げない言葉に傷つけられたりすることがあるかもしれません。(ヤコ 3:2)そういうことのせいで兄弟姉妹と距離を取ってしまうことがないようにしましょう。エホバは仲間を通してあなたを励ましたいと思っています。うつ病と闘っている長老のガビン兄弟はこう言っています。「友達と話したり,一緒に時間を過ごしたりする気になれないことがよくあります」。でも,兄弟はその気持ちに負けないようにしていて,仲間から力をもらっています。エイミー姉妹はこう言います。「これまで経験したことのせいで,なかなか人を信じることができません。でも,エホバと同じように兄弟姉妹を愛し,信頼するよう意識しています。そうするならエホバが喜んでくれますし,そのことを考えると私もうれしくなります」。
将来に関するエホバの約束によって慰められる
18. 私たちは将来どうなることを楽しみにしていますか。それまでの間どんなことができますか。
18 エホバは間もなく,苦しみの原因となるものを全て取り除いて,私たちを完全に癒やしてくださいます。それで,将来を楽しみに待つことができます。(啓 21:3,4)その時には,これまで経験してきたつらいことが「心に浮かぶことも」ありません。(イザ 65:17)でも,エホバは今でも私たちの「傷を包んで」くださいます。いろいろな仕方で慰め,安心させてくださいます。その愛情深い助けを十分に活用しましょう。「神[が]優しく気遣ってくださる」ことを確信してください。(ペテ一 5:7)
23番の歌 エホバはわたしたちの力
a 名前は変えてあります。
b 「 あなたはエホバにとって大切な存在です」の囲みを参照。
c エホバとの間で「物事を正[す]」には,罪の許しを求め,行動を改めることによって,悔い改めていることを示す必要があります。重大な罪を犯したなら,会衆の長老たちに助けを求める必要もあります。(ヤコ 5:14,15)
d 「クリスチャンのための聖句ガイド」にある「心配」や「心の支え」というトピックに載せられている聖句も役立ちます。
「ものみの塔」(研究用)