研究記事 43

121番の歌 互いに励まし合いなさい

疑いの気持ちに負けないために

疑いの気持ちに負けないために

「全てのことを確かめてください」。テサロニケ第一 5:21

ポイント

疑いの気持ちはエホバへの奉仕に影響を与える恐れがあります。疑いの気持ちに負けないために,どんなことができるかを考えます。

1-2. (ア)エホバに仕える人たちはどんな疑いの気持ちを持つことがありますか。(イ)この記事ではどんなことを考えますか。

 私たちはどんな年齢であっても,時々疑いの気持ちを持ってしまうことがあります。 a 例えば若い人は,エホバは自分のことなんて気に掛けていないんじゃないかと思うかもしれません。それでバプテスマを受けることをためらってしまうことがあります。中年の兄弟の中には若い時に,世の中でキャリアを積むのではなく王国の活動を優先するという生き方を選んだ人がいます。でも家族を養うのに苦労していて,自分の選択は本当に正しかったんだろうかという考えがよぎるかもしれません。体力の衰えを感じている年配の姉妹は若い時ほど多くのことができないので,落ち込むことがあります。もしかしたらあなたも,「エホバは自分なんかに関心を持ってくれているんだろうか」とか,「これまでエホバのために頑張ってきたことに意味があるんだろうか」とか,「自分は今でもエホバの役に立っているんだろうか」などと考えたことがあるかもしれません。

2 こうした疑問を放っておくなら,エホバへの信仰が弱くなったり,エホバに仕えるのをやめてしまったりすることさえあるかもしれません。この記事では,(1)エホバが自分のことを気に掛けているのか,(2)過去の決定は正しかったのか,(3)今でも自分はエホバの役に立てているのか,といったことを不安に感じるときに,聖書の言葉がどのように助けになるかを考えます。

疑いの気持ちを取り除くためにできること

3. 疑いの気持ちを取り除くためにどんなことができますか。

3 疑いの気持ちを取り除く1つの方法は,聖書から答えを見つけることです。そうすればエホバとの友情が強まり,「信仰を持ってしっかり立」てるようになります。(コリ一 16:13

4. 「全てのことを確かめ」るためにどんなことができますか。(テサロニケ第一 5:21

4 テサロニケ第 5:21を読む。聖書には「全てのことを確かめ」るようにと書かれています。そのためにどんなことができるでしょうか。自分の考えが聖書に書かれていることと合っているか確かめましょう。例えば,若い人がエホバは自分のことを気に掛けてくれていないんじゃないかと思う場合,その疑問をそのままにしておいてよいでしょうか。いいえ。「全てのことを確かめ」て,エホバがどう考えているかを調べる必要があります。

5. どうすれば自分の持っている疑問に対するエホバの考えを知ることができますか。

5 私たちは聖書を読む時,エホバが語り掛けている声を聞くことができます。でも,自分が持っている疑問についてエホバがどう考えているかを知るためには努力が要ります。ただ読むだけではなく,気になっている点に関係している箇所を探して読む必要があります。そして,エホバが用意してくださっているいろいろな調査ツールを使って詳しく調べることができます。(格 2:3-6)調査する時,エホバの考えを見つけられるように助けてください,と祈りましょう。そして,自分の状況にぴったり合う聖書の言葉や役立つ情報を探しましょう。聖書に収められている自分と似たような経験をした人たちの例を考えることも助けになります。

6. 疑いの気持ちを取り除くために,集会はどのように助けになりますか。

6 エホバが語り掛けてくれている言葉を集会で聞くこともできます。集会に毎回出席するなら,話やコメントを通して,疑問に思っていたことの答えを見つけられるかもしれません。(格 27:17)では幾つかの例を挙げて,疑いの気持ちを取り除くためにどんなことができるか考えてみましょう。

「エホバは本当に気に掛けてくれているんだろうか」

7. どんなことを疑問に思うことがあるかもしれませんか。

7 エホバは自分のことを本当に気に留めてくれているのだろうかと思ったことがありますか。自分なんかが宇宙の創造者と友達になれるなんてあり得ない,と感じたことがあるでしょうか。ダビデもそんなふうに感じたことがあったかもしれません。ダビデは,エホバがちっぽけな人間を気に掛けてくれていることに対する驚きを次のように表現しています。「エホバ,人は何者なのでしょう,あなたが目を留めるとは。死にゆく人間の子は何者なのでしょう,あなたが気に掛けるとは」。(詩 144:3)では,エホバが一人一人を本当に気に掛けていることを聖書からどのように知ることができるでしょうか。

8. サムエル第一 16章6,7,10-12節によると,エホバは人の何に注目していますか。

8 たとえ周りの人から見過ごされていると思える場合でも,エホバは評価してくれています。そのことが分かる聖書の記録があります。ある時エホバはサムエルに,エッサイの息子の1人に油を注ぎ,イスラエルの将来の王とするようにと言いました。エッサイは8人の息子のうち7人しかサムエルに会わせず,一番年下のダビデのことは呼びませんでした。 b でも,エホバはダビデを選びました。サムエル第 16:6,7,10-12を読む。)ダビデの心の中を見ていて,エホバを本当に愛する人であることを知っていたからです。

9. エホバが自分を気に掛けてくれていると確信できるのはどうしてですか。(写真も参照。)

9 エホバの気遣いを実感した時のことについて考えてみてください。エホバがぴったりのアドバイスをくれた,と感じたことがきっとあるでしょう。(詩 32:8)あなたのことをよく知らなければ,そんなことはできないはずです。(詩 139:1)エホバのアドバイスに従って行動し,良い結果になるのを経験すると,エホバが本当に気に掛けてくれているということを確信できるようになります。(代一 28:9。使徒 17:26,27)エホバはあなたの努力に気付いています。心の中にある良いものを見て,友になりたいとも思ってくれています。(エレ 17:10)そして,私たちがその愛に応えてエホバと親しくなろうとする時,喜んでくださいます。(ヨハ一 4:19

「あなたが神を探し求めるなら,神を見つけられる」。(代一 28:9)(9節を参照。) c


「以前の決定は正しかったんだろうか」

10. 以前の決定を振り返って,どんなふうに思うことがあるかもしれませんか。

10 以前の決定を振り返って,自分の決定は本当に正しかったんだろうかと思うことがあるかもしれません。兄弟姉妹の中には,エホバにもっと仕えるために給料のいい仕事やビジネスのチャンスを諦めた人もいます。それからずいぶん時間がたって,周りを見てみると,世の中での成功を追い求めた人たちが安定した暮らしをしているように思えます。それで,「エホバのために犠牲を払ってきたけど,本当に価値があったんだろうか。あの時チャンスをつかんでいたら,もっと余裕のある暮らしができたんじゃないか」と考えるようになるかもしれません。

11. 詩編 73編の作者はどんなことで悩みましたか。

11 同じような気持ちになることがあるなら,詩編 73編の作者のことを考えてみましょう。その人は,周りの人たちが健康的でお金に余裕のある暮らしをし,ストレスのない生活を送っているように思えました。(詩 73:3-5,12)一見成功しているような人たちを見て,エホバに一生懸命仕える生き方をむなしく感じました。ネガティブな思考になって「一日中思い悩」みました。(詩 73:13,14)では,こうした気持ちにどのように対処したでしょうか。

12. 詩編 73編16-18節によると,詩編作者はどのように不安な気持ちを乗り越えましたか。

12  73:16-18を読む。詩編作者はエホバの聖なる所に行き,その穏やかな場所で物事を冷静に考えることができました。そして,気楽な生活を送っているように見える人も,長い目で見れば不安定な生き方をしていて希望がないということに気付きました。エホバに仕えることを優先する生き方が一番良いということを理解し,穏やかな気持ちになりました。そのようにして,エホバに仕え続けようという決意を新たにすることができました。(詩 73:23-28

13. 以前の決定が正しかったのか不安に思う時,どうすれば穏やかな気持ちになれますか。(写真と挿絵も参照。)

13 あなたも詩編作者のように穏やかな気持ちになることができます。どうすればいいのでしょうか。天にある宝を含め,自分が今持っているものがどれほど素晴らしいか考えてみてください。神に仕えていない人たちは,そうした宝を持っていません。あるのは,この世の中で得られるものだけです。将来の希望がないので,今の生活で成功するしかありません。一方,エホバは私たちの想像をはるかに超える素晴らしい将来を約束してくれています。(詩 145:16)違う決定をしていれば成功できたかもしれないと思うことがありますか。でも,本当に成功できたかどうかは分かりません。ただ,はっきりしていることがあります。エホバ神と人への愛に基づいて決定を下すなら,何にも代えられない幸せを必ず味わうことができます。

エホバが約束してくれている素晴らしい将来に目を向ける。(13節を参照。) d


「自分はエホバの役に立てているんだろうか」

14. どんなことが理由で不安を感じることがありますか。どんなことを考えるかもしれませんか。

14 エホバに仕えている人たちの中には,高齢だったり,体調が優れなかったり,体が不自由だったりして,思うようにエホバに奉仕できないと感じている兄弟姉妹がいます。エホバから見て自分は本当に価値があるのか不安になり,「自分は今でもエホバの役に立てているんだろうか」と考えることがあるかもしれません。

15. 詩編作者はどんなことを確信していましたか。

15 詩編 71編の作者も同じような不安を感じ,「衰えていく時に見捨てないでください」と祈りました。(詩 71:9,18)でも詩編作者は,エホバに忠実に仕え続けるなら,エホバは自分のことを導いて支えてくれるということを確信していました。エホバは,できることが限られているとしても,ベストを尽くしてご自分に仕える姿を見て喜ぶ,ということを詩編作者は知っていました。(詩 37:23-25

16. 高齢の人はどのようにしてエホバと仲間のためになることを行えますか。(詩編 92:12-15

16 高齢の兄弟姉妹は,エホバの見方で自分を見るようにしましょう。体が思うように動かなかったとしても,忠実に仕えることができるようエホバは助けてくれます。 92:12-15を読む。)できなくなったことにではなく,今できることに目を向けましょう。皆さんの忠実な手本や優しい気遣いによって周りの兄弟姉妹を力づけることができます。エホバがこれまで自分をどのように支えてきてくれたか,将来のどんな約束を楽しみにしているかを話すことができます。兄弟姉妹のために心から祈ることによっても大きな助けになれるということを忘れないようにしましょう。(ペテ一 3:12)どんな状況にいるとしても,私たち一人一人にはエホバと仲間のためにできることが必ずあります。

17. 自分をほかの人と比べないよう努力する必要があるのはどうしてですか。

17 エホバにもっと仕えたいと思うのに,そうできない時,もどかしさを感じることがあるでしょうか。エホバはあなたができることをする時に,それを大切に覚えていてくれるということを忘れないでください。自分をほかの人と比べてしまいそうになる時も,そうしないように努力しましょう。エホバは人と比べたりはしないからです。(ガラ 6:4)そのことが分かる例があります。マリアはとても高価な香油をイエスの足に注ぎました。(ヨハ 12:3-5)一方で,貧乏なやもめはごく小額の小さな硬貨2枚を神殿に寄付しました。(ルカ 21:1-4)イエスは信仰を表したどちらの女性のことも褒めました。お父さんエホバと同じ見方をしていたからです。エホバは,私たちが心を尽くして,エホバへの愛の気持ちから何かを差し出す時,それがどれほど小さなものであっても高く評価してくれます。

18. 疑いの気持ちと闘う上で何が助けになりますか。(「 エホバの言葉は疑いの気持ちと闘うのに役立つ」の囲みも参照。)

18 私たちは誰もが疑いの気持ちを感じることがあります。でもこの記事で考えてきた通り,信頼できる聖書のアドバイスの通りにするなら,それと闘うことができます。それで,疑いの気持ちを取り除くように努力していきましょう。そうするなら,不安な気持ちを乗り越えて安心感を持てるようになります。エホバは,私たち一人一人に目を留めて気に掛けてくれています。私たちがよく頑張っていることを分かっていて,必ず報いを与えると約束しています。エホバがご自分に揺るぎない愛を示す人全てを愛し,気に掛けているということを忘れないでください。

75番の歌 わたしたちの喜びの理由

a の説: この記事に出てくるいの気とは,エホバは自分のことをどう見ているんだろうかとか,以前にした決定は本当に正しかったんだろうかと不安になったりする気持ちのことです。エホバやエホバの約束に対する信仰が足りないために抱く疑念のことではありません。

b その時ダビデが何歳だったか聖書にはっきりとは書かれていませんが,おそらくまだ10代だったことでしょう。(「ものみの塔」2011年9月1日号29ページ2節を参照。)

c や挿: 若い姉妹が聖書を調べて,エホバの気持ちや考えを知ろうとしている。

d や挿: 兄弟が家族を養うために体力仕事をしている。その間も,楽園の様子を生き生きと思い描くようにしている。